1566.学而篇の曾子2句

1566.学而篇の曾子2句 :2011/6/13(月) 午前 11:27作成分再掲。

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有子3句は前記事どおりですが、

学而篇中の曾子2句
についても見ておきます。

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曾子曰、吾日三省吾身。爲人謀而不忠乎、與朋友交而不信乎、傳不習乎。(学而1の4、#4)

(読み下し)

吾、日に三度わが身を省みる。人のために謀りて忠ならざるか。朋友と交わりて信ならざるか。習わざるを伝えしか。

(通説)

曾子自身、自分は日に三度自省することにしている。人のために謀って忠でないことはなかったか?朋友と交わって信でなかったことはないか?自分でちゃんと分かっていないことを伝えたなかったか?
⇒・・「習」に拘っておけば、後の儒家の多くも「ちゃんと習熟していることだけを伝えたか、知りもしないことを教えたりはしなかったか」と訳されます。

⇒多分、曾子はここでは「習」を「習う、おさらいする、習熟する」という意味で使っています、・・孔門志士派の「習」が羽ばたき実践するという強い意味をもつことは、曾子は百も承知、それを緩める動機、つまり論語冒頭のここで「習」の字を置いて緩和していく・・かなり意図的、とみえます。

孔子の意図を枉げています、こういうことも含めて孔子曾子を「魯」*と見抜いたのだと思います。

*ここでこれ以上言いませんが、魯は朱子も含め魯鈍と読みますが必ずしもそうではなく魯の国の魯=小者でぐずぐずしてずるくて、でも自分には懐かしい生国という含みも感じます。・・孔子は魯鈍といったわけでなく魯の一語ですから(#270)。


⇒念のため、原孔子や孔門志士派流にいうなら「実際できもしないことを伝えなかったか・教えなかったか」となります。が、曾子は本来学窓派で意図的に意味を枉げていますから、ここは後の儒家の読み方でいいのだと思います。・・孔子本来あるいは孔門志士派の厳しさは既にない、のです。

⇒なお、冒頭近くで「吾」というのは、三省との組み合わせで謙虚さを示すものと通常読みますが(もちろんそれでいいのですが)、他方で変な自己主張であり正直言えば気になります。・・孔子は学而篇ではこういう自己主張自己宣伝?型の発言は一切していません(・・父のところ#11がやや個人的でノスタルジックではありますが、笑い)。

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曾子曰。愼終追遠、民徳歸厚矣。(学而1の9、#9)

(読み下し)

終わりを慎みて遠きを追えば、民の徳、厚きに帰せん。

(通説的和訳)

人の終わり(死)を慎んで送り先祖の祀りを欠かさずにすれば、民の徳も重厚なものとなっていくものだ。
⇒これを上記のように訳してしまえば、孔子の根本主張ではなく、曾子の思想、というべきでしょう。

⇒あえて原孔子か孔門志士流に訳するなら「(上に立つものが)いろんな行為や仕事をきちんとけじめをつけて遠い理想を追い続けるなら、民の徳も重厚なものになっていくのだ」・・

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⇒まあこれだけではなんともいえませんが、冒頭篇の重要性を知っていた有子も曾子も各もっとも大事と思うことを記したに違いありません。

後世の儒家は有子を「礼法派・客観派」、曾子を「忠恕派・内面派」ともいって違いを際立たせる
ようですが、

⇒原孔子が原冒頭篇では言わなかった点(用語)に注目すると、有子は上下・乱和・礼美・仁をいう、より安定志向で原孔子からはより遠い印象です。曾子は、原孔子の意図を微妙に外してしまっていますが、忠信・朋友・習・民、をいう点で孔子の用語は継承している、ように見えます。

⇒ここで疑問なのは、孔子の後継者が議論になったときの、孟子司馬遷の証言です。・・孟子司馬遷も述而不作のひとと信じますから、当時それぞれ何らかの伝承があったから書いたのでそれなりの真実、と見るから、ですが・・
つまり、

子夏・子游・子張は間違いなく孔子の陳蔡に同行しており孔門志士派の系譜です(但し三人とも当時十代の少年でメッセンジャーボーイ格、です)。そのかれらが、孔子がコメさえしなかった有子をその姿立ち居振る舞いが孔子に似ている(=ここには内容は全く違うけど、という含みがあります)という理由で孔門の師匠としようとした・・そして曾子はこれに反対した、らしい。・・それぞれ、どうしてなのか、です。
⇒・・この疑問は「宿題」として、先に行きましょう。
(つづく)

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